北北東の風 Blog

地球温暖化と数値シミュレーション

英科学誌のネイチャーの注目のハイライトに、北極海海氷の減少はユーラシアの厳冬の確率を倍にしているとの記事が掲載された。それを受けて、新聞社が、「厳冬は地球温暖化の影響」といったような記事が配信された。(毎日新聞 2014/10/27配信他)

これは、森正人らがネイチャージオサイエンス電子版に発表した、Robust Arctic sea-ice influence on the frequent Eurasian cold winters in past decadesを元に発表されています。(高くてアブストしか読んでません。1部$9.99って。。。。。)

内容はというと、

この10年間、ユーラシア大陸では、厳冬が多かった。北極海の海氷の減少と北極振動(AO)に着目して、再解析データとアンサンブルシミュレーションを用いて、調べると関係があることが示された。海氷が減ると、AOインデックスが負に働く(=ユーラシア大陸で厳冬になる)が分かった。

というものでした。ところで、話は変わるのですが、地球温暖化の議論の中で、「明日の天気予報も当たらないのに、100年後が当たるはずがない」というのを時々聞きます。これについて考えてみましょう。

数値予報は、基本的には予測したい物理量の微分方程式を解くというかたちで実現されています。例えば、風速の東西成分を$ u, v, w $とすると、

$$ \frac{\partial u}{\partial t} = -u \frac{\partial u}{\partial x} - v \frac{\partial u}{\partial y} - w \frac{\partial u}{\partial z} - F_x \tag{1}$$

となります。ここで$ F_x $は、コリオリの力や、摩擦、サブグリットの擾乱を表しています。まぁ結局、微分方程式で表現されているものを時間積分してるだけですね。

ここで、東京インターを東名高速道路で出発する自動車について考えてみましょう。ある時間の車の位置は、速度の積分で求められることがわかっています。(数値予報でいう基礎方程式がわかっている)では、10分後何キロポストにいるでしょうか?これが明日の天気予報を求めるのと同じことです。じゃあ、1時間後のキロポストは?これが週間予報に相当してます。

車が多かったとか、遅い車がいたとかで容易にキロポストはずれることが予想できますね。むちゃくちゃ空いてて、スピード出しすぎちゃったもありますね。この誤差部分が前述の$ F_x $に該当しています。100年後のある日の天気を当てるのがいかに馬鹿げてるかわかります。確かに、温暖化の予想なんてあてにならないと思えてきます。

はて、本当にそうなんでしょうか。温暖化の予想をしている議論している時は、天気そのものを予測しているわけではありません。6時間後、何県にいますか?を問うのが温暖化の議論なのです。6時間後だと、愛知県あたりでしょうか。名古屋かもしれませんし、豊橋かもしれませんが、まぁその辺りにいるでしょう。

これが、明日の天気予報と温暖化の議論なのです。

しかし、これが正解かどうかは実際に分かりません。では、どういう時に現実とシミュレーションに差が生じてしまうのでしょうか。

これくらいのことが考えられます。前述の車の例だと、

に対応していると考えられます。

上記のようにまぁ、今考えられることを考慮して、数値計算したところ、まぁ、温暖化に向かっているのは間違いないねというのが、科学界のほぼ合意事項になっています。

で、さてさて、気象の世界に限らず、非線形の現象はカオスです。そのため、ほんの少しの違いが、結果に差をもたらすことが知られています。車の例だと、出発する時刻の本の少しの違いが、到着時間に大きな影響を及ぼすかもしれませんし、選択した道によって大きく異なるかもしれません。または、多少違いがあっても、結果には大きな影響がないかもしれません。このような非線形の現象を数値予報するにあたって確からしい結果を得るために考えられたのが、アンサンブル予報というものです。

いま、日本の天気予報の世界では、週間予報より長い期間を対象とするものについては、アンサンブル予報を取り入れています。これについては、また、改めて書きたいと思います。